相続放棄

遺産相続にあたって、相続人は、相続の開始を知った時から3ヶ月を期限として、相続財産について、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれの方法を採るか選択しなければなりません。

単純承認とは、被相続人の有する一切の財産債務についてすべて承継することをいいます。

限定承認とは、被相続人の有する、不動産や預貯金等の財産の範囲内で、借金等の債務等について承継することをいいます。
被相続人が有する預貯金等の財産額と、抱えていた債務額のいずれが大きいか不明な場合に用いられます。

相続放棄とは、被相続人の有する一切の財産債務について全く承継しないことをいいます。
被相続人が有する財産額に比して、抱えていた借金等の債務額が明らかに上回っていた場合等によく用いられる制度です。

■相続放棄と代襲相続
代襲相続とは、本来の相続人が死亡していたり欠格するなどして相続できない場合に、当該相続人の子や孫が同じ法定相続分につき代わりに相続することをいいます。
ここで、ある人が相続放棄をした場合に、その子や孫が代襲相続できるか、という問題があります。
結論から言うと、相続放棄をした場合には、代襲相続はできません。そもそも、相続放棄をした人は、その相続に関しては初めから相続人でなかったものとみなされるため、代襲相続により相続権が移ることはないといえます。

■相続放棄した場合にも受け取れる財産
相続放棄をした場合にも、被相続人の死亡を原因として受け取ることができるようになる財産のうち、受取人固有の財産といえるものについては受け取ることができます。
例えば、死亡保険金や遺族年金については、受取人が別に指定されているうえ、被相続人が死亡時に有していた財産とはいえず、相続財産にはあたらないため、相続放棄してもこれらを受け取ることができます。
これに対し、被相続人本人が受取人となっている傷病保険等の保険金については、被相続人が生きていれば本来被相続人本人が受け取るべき財産であるため、相続放棄した場合には、これらを受け取ることはできません。

■不動産の相続放棄は容易ではない
相続放棄は、相続人が相続により受ける負担を免れようとする場合に行われます。
例えば、しばらくだれも住んでおらず、ボロボロになってしまった空き家等については、相続してしまうと取り壊すにもリフォーム等するにも費用がかかるため、相続人は相続放棄をしたいと考えるでしょう。
しかし、民法940条によると、相続人は、相続放棄をしても当該土地や建物の管理義務は免れない、とされています。したがって、このような場合には、相続放棄は向かないといえます。